妄想小話4

甘えん坊なモーモン、モモモンモンは、己が可愛いことを自覚しているので反省をしない。
ジャングル住宅村のねとりとした湿度の中でも、軽快に飛び回りながら、ぽろぽろと排泄物をこぼすのである。

「あー！モンモンこら！散歩は良いけどトイレは庭でしろって言ってるだろ！」
主であるウェディは、袋とスコップを片手にモモモンモンの首根っこを掴み上げた。不服そうに皺を寄せるのを見据え、
「生態だから仕方が無いかもだけど…ほら尻に力を入れて！お前なら出来る！」
モモモンモンが取り合えず、力の入った表情をすれば、ウェディはしぶしぶと手を放す。
「まあ…我慢してる感のある顔で飛んでれば、ご近所さんにも怒られないかな…」
掃除しに行こう。と歩き出す後姿に表情を緩めたモモモンモンの耳が、他愛もない呟きを捕らえた。

「お前らのふんを肥料に使えたら楽なのになー」
少し首を傾げて主の背中を眺め、その言葉の意味を汲み取ろうとする。

「ふんってうんこ？」
数日後、モモモンモンは同じウェディに育てられている仲間に臆面もなく尋ねた。
「うまのふんとか、うしのふん…の、ふんの事？」
「多分そう、肥料にするって言ってた。臭い奴。いたずらのスペシャリストなら分かるかなって。」
「それはうんこだな。」
いたずらもぐらのどろたぼうはモモモンモンの突拍子も無い問いに真面目に答える。
彼は【いたずらもぐら】の中でも褒められると【いたずら】すら忘れる、おちょうしものな性格であった。

「僕らのうんこって、肥料になるかな？」
「うーん。使わないって事は、ならないんじゃないか？肉ばっか食べてるからかな？」
と、モンスター牧場での肉パーティの事を思い出して舌なめずりする。最近の主は、「ダイエットしなさい！」と必要最低限の食事しかくれないので、牧場での豪勢な肉料理は、思い出すだけで夢見心地にさせてくれる。しかしどろたぼうの発言にきれものな性格のエンタシスマン、スカイツリーがストップをかけた。

「どの糞でも肥料には出来るぞ多分。ある国では人糞を肥料用回収することによって水周りの技術…下水技術が確立されていない時代でも、町の清潔さを誇っていたらしい、人は雑食性であるからして、有害物質を摂取していない糞なら、どの生物の糞でも堆肥化は可能だと考えられる。ただし何事も原料の安定性が無ければコスト的に商売として成り立ちにくい。一般家庭のペットやモンスターの糞では少量過ぎて、集める手間や堆肥化のための一時保管場所、流通の事を考えてもコストが掛かりすぎだ。そのため大量の糞の一定供給が確実な家畜（馬や牛）の糞を使う事が最も効率的なのである。」

モモモンモンとどろたぼうはスカイツリーの四角い口から発せられる長文を斜め読みして頷いた。
「そうかー面倒なのかー」
「俺らもそこまでの量は出せないしな…ところでどうして急に、肥料の話に？」
「魚男が言ってた。僕らのうんこが肥料に使えれば楽なのにって…」
「ははあ」
「なるほど。流行のエコか。ロハスか。」
「いやあ…あの人の事だ、大方畑に直接糞巻いて良い花が咲けば一石二鳥なのになーという事ぐらいしか考えていないだろう。堆肥にする過程を教えればさじを投げるに違いない。賭けても良い。」
「まあ…愛好してる煙草ですら水煙草にしてから、めんどくせー！って騒いで、一時期喫煙回数減らしてたぐらいだしな…今は普通の煙草うきうきで吸ってるけど。」
「それが無理のない生き方らしいよ。」
「ろくでもないな」
「うん。ろくでもない。」

「そういえばさ、うんこだけじゃなくて生ゴミでも肥料って出来るんだね？」
「ああ、なんか…ご家庭の生ゴミを有機肥料に…みたいなの、聞いたことあるわ。」
「まあ園芸ガーデニング用の肥料としてなら問題ない量な気はするが、そもそもこの家はそこまで生ゴミも出な…」

「フォンデュって、生ゴミ？」
甘えん坊のモモモンモンは悪気無く酷い事を言い出す事が、まま、ある。

「いや…な、生ゴミではないと思うけど…」
「確か…に、チーズで出来ているかも…しれないな？」
「じゃあフォンデュを埋めれば、肥料になるかな？」
「ちょっと待て、結果を重視しすぎてるぞモンモン。魚男は決して肥料に困っている訳では…あわよくば、糞が肥料になればという話であって」
「そうそう、肥料の為に仲間を埋めるとか、本末転倒って言うんだぜ多分。」
「でも例えば、落とし穴を掘ってフォンデュを落として、そこにうんこして埋めれば…肥料になるよね？」

「やだ怖い！モンモンが怖い！」
「そ、そういうのはきれものと名高い我輩が言うからウィットなジョークになるのであって！甘えん坊のモンモンが言ってはいけない！」
「やめたげようよ！魚男、フォンデュ気に入ってるじゃん！連れて走ってる時の追い掛けられてる感がたまらんって…」
「それが…気に食わないと言ったら…？」
「「闇モンモン！」」

訂正：悪気があって酷い事を言う時もある。

「…でも、魚男はともかく、ピエールが怒るから我慢する。」
「モンモンはピエールだけには弱いな」
「怒らせると怖い。」
「まぁ分かるよ。怖いよな。俺この間顔だけ出して埋められたもん。」
「それは君が、魚男に持ち上げられるまま、いたずらを設置しまくったからだろう。」
「け！いいこぶりっこめ！俺のいたずらは愛情表現ですー！」
「子どもだなぁ。ピエールさんには迷惑を掛けないと我輩は誓っている。」

「ピエールにハートとか出すと、酷いことされるから気を付けた方がいいよ」
「「え」」
「ぼく昔、魚男に雑巾絞るみたいな感じで絞られた。」
「なにそれ怖い…」
「モンモンの可愛さを持ってしても…？」
「多分スカイツリーは、割けるチーズみたいに縦に割かれるし、どろたぼうはスコップ叩き折られると思う。」
「ちょっと待て、我輩だけ酷く無い？」
「だってスカイツリー…丸くてふかふかしてないし…」
「そこなんです？我輩は縦長で固いという理由だけで裂かれる運命なんです？」
「想像に難くないな。良かった俺、丸くて。セーフ。」
「筋肉の塊の癖して！！！！パワハラ！いやモンハラ？うーんこういう場合は一体何ハラスメントになるのだろうか…」
ぶつぶつと悶絶しながらアーチ状に体を丸め、頭を地に付け考え出したスカイツリーを見て、このポーズなら割られないかも知れないな…といたずらもぐらは思った。多分主はこのポーズを偏愛しているに違いない。

「「可愛さは正義だから…」」
例え、彼らの主の趣味がちょっとばかりニッチだとしても、これは万国共通の常套句なのであった。

そろそろランキングから姿を消そうと思うんですけど、これだけ更新しないとですね、むしろこのタイミング（802位でしたよ？）で更新して、ランキングってどこまで上がるのやら…ちょっと気になるので貼っておきます。
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